Craftsmanship
職人の技術
職人の技術
ブレードと呼ばれる布テープでデザインを象り、その隙間に一針一針様々なかがり模様を施して作られるバテンレース。
すべて手作業による職人の技術が、美しいレースを生み出します。
布と糸で、すべて手作りで作られるバテンレース。テーブルクロスなどの大きな製品は、仕上げるのに何か月もかかります。この技術と根気のいる作業を支えてきたのが、上越・高田の女性たちでした。
明治に日本に伝わり、当初は横浜、神戸をはじめ様々な地域で発展してきたバテンレースですが、中でも特に盛んだった地域の一つが、吉田バテンレースのある新潟の上越地方。
豪雪地帯という環境に暮らす雪国の人々の辛抱強さが、根気のいるバテンレースの作業に向いていたことが、発展につながったといわれています。
バテンレースのデザインは、ブレードとかがり模様の組み合わせによって自由に作ることが出来ますが、職人は「作りやすさ」にこだわった模様を考えます。それは単純に作業を楽にするためではなく、凝った柄になるほどブレードを途中で何度も切るので、端の始末で布が重なって、ゴワゴワしたものになるため。一筆書きのように縫えるデザインほど、見た目も風合いも美しく仕上がります。
バテンレースを仕上げるための工程をすべてわかったうえで、一番美しく仕上げられるよう考える。工程を知り尽くしているからこそできるデザインです。
ブレードを型紙に当てて、図柄通りに糸でしつけていく「地付け」の作業。一見地味ですが、この作業がレースの風合いを決めてしまいます。
ブレードには両端に引き糸があり、それをを引いて模様に沿ったカーブを作っていきますが、引きすぎるとブレードにしわが寄り、柔らかみのある曲線を出すことが出来ません。自然にカーブをつけるためには、熟練した職人の微妙な感覚が必要とされます。
ブレードで作った模様の空間を糸でかがって模様を入れていく「かがり模様」は、レースの繊細な美しさを生み出している、職人の腕の見せどころとなる部分。
糸を撚ったり結んだりして、様々なパターンの模様を編んでいきますが、その何気なく見える指先の動きがとても重要。ふんわりした美しいレースに仕上げるには、絶妙な力の入れ方や糸の扱い方による、「匠の技」が求められます。
バテンレースは縫い上げて終わりではありません。工程の中でいちばん難しく、職人の勘が必要とされるのが、仕上げの作業です。
仕上げの「のり付け」は特に気を遣う作業。型崩れを防ぐために、コーンスターチを使った自家製のりを繊維の奥までしみこませるのですが、気温や湿度により、のりの濃度やレースを浸す時間を変えていきます。
最後のアイロンがけも、仕上がりを左右する難しい作業。繊細なレースの線対称の図柄がずれると、美しいデザインの気品まで損なわれてしまう、緊張する作業です。
代々受け継がれてきたバテンレースの技術。
吉田バテンレースでは、上越の地に根付いた伝統の灯を守っていくことを使命と考え、若い世代への技術の継承に取り組んでいます。